永遠の檻
カチリ カチリ カチリ ・・・
何かの音が聞こえる――聞き慣れた 煩わしい それでいて どこか懐かしい――時計の音。
閉じていた瞼を開けると そこには いつも変わることのない 石壁の部屋。
いつから 此処にいるのか わからない。
自分が何年間 此処にいるのか わからない。
時間の感覚は 此処に来た時に 多くの記憶と共に 捨て去ってしまったから。
辛うじて 覚えているのは 自分が犯した罪と それによって 失われた 大切な人の 記憶。
そして 忘れようとも 忘れられない
この身体に 心に 魂に 深く刻み込まれた 一つの 呪われた契約―――。
しばらく前から 身体は 物を 受け付けなくなっていた。
時々 部屋に運ばれてくる 硬いパンや水さえも 咽喉を通らない。
むしろ 身体が それらの物を 必要とせずとも 動ける事を 感じているからかもしれない。
そして いつしか その身体を動かす事も なくなった。
冷たい 石壁に 背をもたれ 足を投げ出し ずっと過ごしている。
そこから 見える 景色は いつも 変わらない。
床と両脇は 粗く積み上げられた 石の壁。
長い年月のせいで 苔に包まれ 所々 崩れかけてさえいる。
それは 目の前の 開けた空間にある 無表情な 鉄の格子も 同じだ。
垢錆びて 少し触れただけでも 脆く崩れ去りそうな程 腐食している。
だが それを 為そうとは 思わない。
あの瞬間に すべての望みを 捨て去った 自分が ここから 外に出て 何が得られる?
結局 どこに行っても 消えることのない 傷跡は 心の虚ろは 変わらない。
瞼を閉じれば 深い闇。
心は また 罪の起こる 過去に縛られ 終わらない 悪夢を 見る――永遠に。
悪夢の 入り口に 立った時 遠くで 誰かの 笑い声を 聞いた。
あれは 一体 誰なのだろう?
呪われた 契約を 交わした 人ならぬものか?
力なき 自分のせいで 命を落とした 彼女か?
それとも―――――狂ってしまった 自分自身なのか?
答えは 永遠の 闇の中にだけ ある。
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