射干玉の命恋し――
ビルの上で 街灯の下で 空に抱かれて 烏が哭(な)く
父が 母が 兄が 姉が 恋しいと 烏が哭く
けれど 別れてしまった 家族と 共に生きることはできず
それ故 烏は友を求める 共に生きるべき友を
夕暮れに 闇に紛れて 風に揺られて 烏が哭く
共に生きるべき 友が欲しいと 烏が哭く
けれど 友とも 別れる時が いつか必ず訪れる
それ故 烏は探し求める 別れる事の無い何かを
町の片隅 古びた公園で 血に誘われて 烏が集う
別れの無い 大切なものを見つけたと 烏が集う
血と共に溢れ出す 命の欠片を 飲み込んで
烏は身の内に 別れる事の無い 友を得る
そして 彼らはそれ故に 今宵も 命を求めて彷徨い
その身と同じ様に 魂さえも 射干玉の闇に染まる――
父恋し 母恋し 兄恋し 姉恋し
友恋し ――― 命 恋し
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